はじめに。
最近、鏡視下肩板修復術の術後リハビリテーションを担当させていただく機会が増えてきました。
そこで、どのようなことを考えて術後リハビリを行うべきかについて、現時点での僕の考えをまとめてみます。
まずは画像所見の見かた、組織の修復過程、日常生活動作の指導などについてまとめてみようかと。
よろしくお願いします!!
画像チェック。
まず見るべきは肩の画像所見です。
術前の肩の状態を詳細に把握することで、術後の断裂リスクを予測、あるいは自動運動を開始するタイミングなどを判断しています。
その人の肩板が再断裂しやすいのかなどを確認しています。これはカルテから確認できるので、患者さんに会う前に必ずチェックしています。
見る順番としては、①レントゲン像 ②CT ③MRI、の順番で見るようにしています。
①X線像
・・・全体の骨アライメントの把握、骨棘や骨損傷の有無などを把握。
②CT
・・・骨の状態をより詳細に確認、関節窩の形状、シストの有無など。
③MRI
・・・軟部組織の状態を把握、ここで肩板は初めて映し出される。
僕がX線で確認する位置は、図で示しおきます。他にあったら教えてください!
MRIは肩板修復術で必ず確認するべきでして。。
◎肩板の断裂形態とサイズ:
完全断裂:confield分類
小断裂(<1cm) or 中断裂(1cm-3cm未満) or大断裂(3cm-5cm) or 広範囲断裂(5cm以上)
不全断裂:滑液包面断裂 or 関節面断裂 or 腱内断裂
◎脂肪変性の評価:Goutallier分類
stage1ごくわずかな脂肪浸潤、stage2筋組織>脂肪組織
stage3筋組織=脂肪組織、stage4筋組織<脂肪組織
肩板の修復過程。
肩板の修復過程というよりは、肩板と縫い付けた骨の間での修復過程と考えるべきでしょう。
「bone to tendon healing」って検索かけたら出てくるかもしれません。
番外編:肩甲下筋も修復している症例で思うこと。
緊張を落としたり、滑走性を出していきつつ、可動域が出た分は動かしていく。
こんなイメージを持っています。
というのも、極力肩板が伸張されるようなことは避けたいからです。
無理に可動域訓練をして、修復部にストレッチがかかりすぎると再断裂になり得ます。
理学療法士が再断裂を作ってしまうとか最悪ですもんね。。
肩甲下筋を縫っている場合は、より注意したほうがいいのかなとも最近は思ってます。
ここから話すのは勝手な妄想ですが、
肩板は
肩甲下筋 対 棘上筋・棘下筋・小円筋
という形で、半分程度が肩甲下筋で成り立っています。
肩甲下筋が切れていたということは、肩甲下筋が切れるくらい肩に負担がかかっていた、棘上筋は脂肪変性が進んでいた、術前はほぼ球心位を保てていなかった
とも考えられるかなと。。つまりは術後も縫ってはいるが、やはり球心位を保つには特に修復初期の段階では厳しいのではないか。
つまりは肩甲下筋も修復している症例ではより慎重にリハビリテーションを進めるべきではないか。
という僕の中での結論に至りました。
日常生活動作の指導ポイント。
術後は1ヶ月程度、肩の装具をつけることになると思います。
外転装具というやつです。これは、肩関節の安静肢位と言われ腱板への負荷を極力減らすよう考え作られています。
というのも肩は普通吊り下がっています。この状態でも縫った腱板部分は伸張されていて、あまり腱板にとってよくない環境にさらされることになるのです。
肩は外転45度くらいで上下の関節包が均一に伸びるとされ、おそらくこのポジションをねらいたいのかなと。。
あとは寝る時の姿勢も大事でして。。
背臥位(仰向け)で寝る時肩甲骨の下って少し浮きませんか?
この状態で肘を下ろして寝てしまうと、肩が伸展方向に落ち込んでしまいます。
多少の伸展が入った程度で腱板が簡単に切れるとは思えませんが(軽い伸展のみならそこまで伸張されるわけではない)、
それでも捻れるようなストレスや、軽い伸張ストレスが加わってしまうでしょう。
これは痛みにもなりえます。そこで寝る時には上図のように肩甲骨の下に枕やタオルをおいてこのようなポジションをとるよう指導しています。
特に、術後早期は炎症が必ず生じますので、極力肩関節の内圧を下げたいというのも狙いだと思います。
痛みを感じる物質が圧迫されることで人は初めて痛みを感じますので、
肩関節の内圧が一番低いとされる外転45°で保つ
とても合理的だと考えています。
最後に。
今日は腱板修復術の入りとして、画像所見、腱板の修復過程、日常生活での注意点についてまとめてみました。
ぜひ患者さんにも読んでいただきたい内容です。
患者さんの病態に対する理解度、これはどの疾患であれ円滑にリハビリテーションを進める上で重要なファクターになってくると考えています。
医者や理学療法士の指導を守らず再断裂した。なんてことにならないようにしていただきたいです!!
また腱板修復術についてはまとめていきたいと思います!!