はじめに。
今回、橈骨遠位端骨折の患者さんを担当することになり、そこでざっくりリハビリに必要なことをまとめてみようと思います。
今回は特に回外制限が強く、可動域獲得に難渋しています。
と思えばスッと可動域獲得に至る症例もいるわけで、、
何が関節運動を阻害する因子になっているのかを解剖的に考えることができればと思っています。
先輩からのご指導もいただきまして、その内容もまとめておこうかなと、、
ぜひ最後まで見て行ってください!
橈骨遠位端骨折とは。
一口に橈骨遠位端骨折といってもその病態は様々で、
まず関節内骨折なのか関節外骨折なのかという点です。
関節内骨折とは関節面まで骨折線が及んでいるものを指し、関節外骨折と比較して予後はあまり良くないとされます。もちろんお医者さんによってどこまで綺麗に整復されたかとかもありますが、、
関節外骨折で遠位骨片が背側に転位したものをcolles骨折、掌側に転位したものをsmith骨折と言います。
関節内骨折で背側に転位したものを背側Barton骨折、掌側に転位したものを掌側Barton骨折と言います。
可動域はどこから出していくべきか。①
今回の症例で一番困っていたのは回外が全く出なかったことです。
術侵襲によって方形回内筋が制限されるのは分かってたのですが、あまりに動かないためどうしたものかと悩んでいました。
痛み方としては、回外時に尺側手根伸筋腱のところでつまるような痛さと訴えがありました。
僕はこの解釈を尺側手根伸筋(以下)に筋スパズムが生じていることで、回外時に尺骨茎状突起基部をECU腱が乗り越えることができないため疼痛が生じていると解釈し、ECUを緩めることばかり考えていました。
浅はかでした。
先輩がエコーを実際に当てながら解説してくれました。
方形回内筋にエコーを当て、まず言われたのは、
「回外時に、方形回内筋が尺骨によって巻き取られるように伸張する動き、これが健側と違いすぎる」
「本来尺骨は回外時掌側に軽く亜脱臼するが、方形回内筋が伸張されないことによって尺骨の副運動が生じていない、これのせいで後ろでECUがインピンジしている」
「まずやるべきは方形回内筋の動きをしっかり出してあげること」
これらのことを言われて、びっくりしました。
どこまで文献を読んで、行動したらここまでのレベルにたどり着いたんだろうと。
エコーを使って説明されるとここまですんなり腑に落ちるものかと。
そこからは方形回内筋を意識してしっかり動かしていくようになりました。
可動域はどこから出していくべきか。②
回外90度は術後3週までに獲得したいと以前講義の中で聞いたことがあります。
方形回内筋は手術で切っている以上どうしても周囲で癒着や筋そのものが固くなりやすいため、拘縮が生じるまでの期間を加味しての発言だと捉えています。
今回術後3週で75度程度までなんとか出すことができて少し安心しました。
次に困っているのはやはり背屈です。
回外と背屈、これはセットで固くなりやすいんだなあと。
方形回内筋の上を屈筋群が通ってるんでそりゃそうですよね。。
あとは手指の伸展もですね。とりあえずこの3つをまず出していきます。
回外もある程度出す順番があって、これは受け売りです。
掌屈位での回外から出すべきだと。
これは方形回内筋と掌側関節包は連結しているため、掌屈位の方が絶対に回外が出やすいとのことでした。どこまでも解剖学に忠実です。
その次に背屈+回外。この順番はどの症例でも不変かなと。
プレートの固定位置の話。
今回、プレートの抜釘を術後3ヶ月後に行うことに。。
その理由も最初はなんでかなと思いましたが、
掌側プレートがwater shed lineという、橈骨遠位にある解剖学的なエッジを超えて設置されてる場合には屈筋腱の断裂リスクが高まると言われています。
soong分類でstage2程度であればなお断裂が生じやすいです。
プレートと屈筋腱の間で摩擦ストレスが生じ、繰り返されるストレスで断裂するというイメージですね。
要するにプレートの遠位固定は長母指屈筋腱の断裂リスクになるということです。
そのためお医者さんは早めにプレートを抜くという選択をされたのかなと。
最後に。
まだまだ橈骨遠位端骨折は考えるポイントが多いと思いますが、今回はここまでに。
・回外制限は背屈制限や手指伸展制限に繋がりうる
・術後、プレートの固定位置を把握し、腱の断裂リスクについて考える必要がある
自分自身他には合併症の有無や遠位橈尺関節(DRUJ)の不安定性はないかなどを、必ず確認するようにしています。
それはまた別の機会に!!